BEFORE DAWN
蒼い月の夜


いつか君と出逢ったのは…。

"寒いから風邪ひかないようにね"
まゆはいつもそう言いながら俺に毛布やカーディガンを押しつけてくるのだが、実際、この冬、まゆの方が俺よりも風邪をひく回数が多かった。
現に今もまゆは赤い顔に加えおでこに"冷えピタ"を貼った状態でベッドに横になっていた…って今回は俺にも責任があるんだけどね…(汗)
まゆの汗でしめった前髪をゆっくりとかきあげて髪の生え際に触れてみるとまだじんわりと熱かった。
「う…ん…」
突然のまゆの声に俺があわてて手を離すと、まゆはそのままごろりと寝返りをうった。
ベッドのすぐ横の白い壁に顔をくっつけそうな状態でまゆはまたすうすうと寝息を立てていた。
思ったより具合の良さそうなまゆに俺はほっと息をついた。
そして、ベッド横の小窓から入る月明かりがちょうどまゆの顔にあたっていたのに気づいた俺はベッドの反対側から腕を伸ばした。
窓の向こうには蒼白い月がぽっかりと浮かんでいた。
その光景に俺は思わずカーテンを閉めようとしていた手を止めた。
…こんな月、前にも見たことなかったっけ…?

それは半年近く前の春の終わり。
俺がまゆに初めて「好きだ」と言った日。
俺が人生の曲がり角を曲がった日。
あの夜、俺はこんな蒼い月をながめながらまゆのところへ歩いていったんだった。

それにしても…あの頃はまさか"未来の自分"がこんな生活を送っているなんて夢にも思わなかったよなぁ…。
でも、"あの時の自分"が勇気を出さなかったら、きっと俺は今でも自分を責め続ける日々を送っていただろう。
そんなことを考えながら今日の月をながめていた。

「こうちゃん…」
はっと我に返った俺はあわててまゆに目をやった。
しかし、まゆはさっきと同じように身体を丸くしたまま目を閉じていた。
…なんだ、また寝言か…(そういえば、まゆって寝言多いよなぁ/笑)
俺はくすっと笑うとゆっくりとカーテンを閉めた。
そして、ベッドを見下ろすとなんだか笑っているような顔でねむっているまゆの姿があった。
…なんか楽しい夢でも見ているのかな?(笑)
この調子なら明日の朝には熱も下がっているだろう。
俺はそんなことを考えながらまゆのほほにそっとキスをした。

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昨年(2004年)UPした「空がきれい」の続編のようなお話。
タイトル曲はオリジナルはLOUさんという方が歌っているそうなのですが、綾部は槇原さんがカバーしたものした聴いたことがないのでした^^;
ちなみに、まゆがしょっちゅう風邪をひいているのは綾部がそうだから、かもしれない…(爆)
[綾部海 2005.10.3 / 2011.7.30 ブログから再録]

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Photo by 足成