Triangle
10

「手塚さんに呼び出されたんだって?」
放課後、13Rの教室で雪野と要はLHRで募集したスポーツ大会のスローガンの候補をまとめていた。
「え?」
体育委員会に提出するプリントにその候補を書き出していた雪野は突然そう聞かれて一瞬なんのことかわからなかった。
「なんで知ってるの!?」
「クラスのみんなが言ってたよ。」
笑って言う要に雪野は「あ」という顔になった。
"クラスのみんな"と言っているがおそらく里美あたりがメインだろうと雪野は思った。
「あの人なら大丈夫だと思うけど、なんか変なこととかされなかった?」
「あ、全然。ちょっと話したり、ピアノに合わせて歌ったり、とか...」
要は雪野が歌ったというのを聞いて「へぇ」という顔になり、にこっと笑った。
雪野はその顔を見てなんとなく赤くなってしまった。
「おれがその場にいたら阻止してたんだけどねぇ...おれがいないとき見計らってくるとは手塚さんもさすがだなぁ。」
要は腕組みをしてうんうんうなづいた。
「そういえば、要くん、あのときどこ行ってたの?」
「ん、杉本先生にちょっとね...」
いたずらっぽく笑う要に雪野は「?」と首をかしげた。
(昨日の"お礼"に行っていたらしい...)
「それにしても、昨日の図書室でのことが原因で呼び出されるとは思わなかったよ。」
とりあえず要の発言はほっとくことにした雪野は深々とため息をついた。
「あ、昨日はおれも考えなしだったかもしれない...。ほんとにごめんね!!」
要は顔の前で手を合わせて雪野に頭を下げた。
「そんな...要くんのせいじゃないよ〜。」
要が「もとはと言えば杉本先生が悪い!!」と心の中で思っていたことは当然雪野は知る由もなかった(笑)
「あ、でも、ほんとに要くんたちも大変だねぇ。どこ行っても誰かに見られてるみたいで。」
「う〜ん、まぁ、おれは学校にいる間だけなら"パンダ"になっても別にかまわなかったんだけど、天がね...。」

5月。
基本的に他人には無関心な天といえども、さすがに女生徒たちの視線&あいさつ攻撃に我慢できなくなっていた。
そして、その"集団"に光希がからんでいることを知った天は要とともに光希のクラスに怒鳴り込んできた。(要は怒鳴らなかったが(笑))
「光希、なんだよあの女ども!! おまえがベランダから声かけたりしたからだぞ!!」
天の剣幕に周りにいた3年生たちはびっくりしていたが光希は平気な顔をしていた。
「いいじゃないの、別に。ただあいさつしているだけじゃない。」

"要派・天派"の活動は「要 or 天(両方でも可)を校内で見かけたら必ずあいさつをする」というものであった。
最初のうちは光希の周辺の3年生だけであったが、徐々に増えていき、この頃には女子の半数近くに声をかけられるようになっていた。
もちろん要は笑顔で返していたが天は知らんぷりしていた。
しかし、1日に何十人(!?)にあいさつされるようになると、天もイライラがひどくなったのか「うるせぇ!!」などと返すようになってきた。
(そして、"これ"を目当てに声をかける女子増加...)

「あんなのいやがらせ以外の何物でもない!! 今すぐやめさせろ!!」
「え〜? でも、いやがってるの天ひとりじゃない。ね、要?」
「まあね。」
頭から湯気が出そうなくらい興奮している天に対してあくまでも冷静な光希と要であった。
「要!?」
「だって、おれは別にいやなことされてると思わないし。」
「でしょ〜?」
要の言葉に光希はちょっといたずらっぽい笑顔になった。
天は味方として連れてきたはずの要が光希の側についたことにショックを受けたようだった。
(厳密に言えば要は中立なのだけど)
さっきまでピンと立っていた天のしっぽがだんだん下がっていくのを(犬的表現)、光希はおもしろそうに見ていた。
「まぁ、天がそんなにいやならやめてもいいんだけどね。」
それを聞いた天はしっぽをパタパタふりまくっている犬のようによろこんでいた。
(ほんとにわかりやすいよね♪)
くすっと笑った光希はさらに続けた。

「ただし、条件つきでね♪」

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あれ? 今回"○○が××するシーン"が入るはずだったのに...(Hなシーンじゃないですよ^^;)
なにげに光希を出したら回想シーンが終わらなくなってしまいました(ーー;)
次回こそ!!
[綾部海 2003.11.21]

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