Triangle
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"呼び出し"騒動から数日が過ぎた。
光希は雪野の"告白"を公約(!?)通り例の"リクエスト"した要派のメンバーに伝えたらしく、"雪野が要を好き"といううわさはあっという間に学校中に広まった。
だが、当の要は光希から「好きか嫌いかでいえば好き」ということを聞いていたせいか、雪野への態度はいままでとまったく変わらなかった。
しかし、女子の反応はいままでと大きく変わった。
いままではわざとぶつかってきたりといった直接的な攻撃(!!)が多かった。
だが、そういった行動で雪野から光希に自分のことが伝わるとまずいと思ったのか、今度は誰がやっているのかわからない、ある意味陰湿な攻撃になってきた。
学校に着いたら上履きがびしょびしょだったり、持ってきたはずの教科書がなくなってたり、机の中にへびのおもちゃが入っていたり...。
まぁ、いたずらとしては比較的かわいい(!?)ものばかりだったし、雪野もそんなに気にしないことにした。
そして、攻撃は毎日毎日しつこくくり返されていった。

さらに数日後。
さすがに雪野もあの"いたずら"がうっとおしくなってきた。
おまけに、相手も調子に乗って攻撃がだんだんとエスカレートしてきて、隠されるだけで無傷で返ってきていた教科書も"全ページいたずら書き"のオプションがプラスされるようになった。
無反応でいれば相手も飽きてやめるだろう、と思っていた雪野は自分の考えが甘かったことを痛感した。
しかし、今さら正面切って対抗しても相手の思うつぼだろう。
雪野はどうしたらこの問題を解決できるのかわからなかった。
光希に相談するという手もあるが...それも今の状況を悪化させるだけのような気もする。
雪野の状況を察した要が間に立とうとしてくれたが、雪野はそれを丁重にお断りした。
ここで要が出てきたら要派全員を敵に回すようなものだ。
雪野は頭を抱え込むしかなかった。

「雪野〜。次、体育だから早めに更衣室行っちゃおうよ。」
里美の声に雪野は顔をあげた。
「大丈夫? なんか顔色悪いよ?」
青白い顔をした雪野に里美は心配そうな顔をした。
「ん〜...大丈夫、大丈夫。とっとと行こう。」
雪野はフラフラと立ち上がると廊下に並んだロッカーへ体育着を取りに行った。
が...。
「ない...。」
「え?」
「体育着がない。」
朝、学校に来たときにちゃんとロッカーに入れたはずの体育着の入った袋がなくなっていた。
ロッカーにはちゃんとした鍵がかかっているわけではないので、たしかに誰でも勝手に持っていくことができるのだが...。
雪野はこの場にしゃがみこんでしまいたいほど情けない気持ちになったが、そんなことをしたら里美に心配をさせてしまう。
なんとか平気なふりをした雪野は里美にぎこちない笑みを向けた。
「ちょうど体調よくなかったから保健室で寝てるよ。先生にそう言っておいて。」
「ひとりで大丈夫? いっしょに行こうか?」
「大丈夫、大丈夫。 早く行かないと、里美、授業に遅れちゃうよ。」
雪野はそう言うと多少ふらつきながらひとりで保健室へ向かった。
そんな雪野の後姿を里美は不安そうに見ていた。

「体育のときいなかったみたいだけど、どうしたの?」
放課後、例によって会議室へ向かう途中、要が雪野に言った。
「あ、ちょっと貧血気味だったもんで保健室で寝てたの。」
雪野が笑って言うと、要はほっとした顔をした。
実は体育の時間に雪野の不在に気づいた要は「(まさかと思うけど)どこかに閉じ込められたとか...」と暗い考えに陥っていたのだが、雪野にはとてもそんなことは言えなかった(爆)
「貧血だなんて大丈夫? 委員会なんて出てないで家で休んだ方がいいんじゃないの?」
「あ、そんな大げさなものじゃないから...寝たらよくなったし、うん。」
もちろん"貧血"というのはうそなのだが(ある意味似たようなものだったかもしれないが)、要によけいな心配をさせてしまったようだ。
「あんまり無理しないでね。」
そう言って笑う要に雪野はちょっと罪悪感を覚えていた。

「お前ら、ちょっといいか?」
会議が終わり教室に戻ろうとしていた雪野と要に担任の杉本が声をかけてきた。
「なんですか、先生?」
以前杉本に"よけいな用事"を頼まれた要はじろっと杉本を見た。
「なんだよ、要、怖い顔するなよ。大丈夫、今日は変なこと頼まないから、な。」
あの後要にたっぷり"お礼"された杉本はちょっと逃げ腰になっていた。
「で、なんなんですか、杉本先生?」
なんだかふたりの話が長びいていきそうに感じた雪野がストップをかけた。
「あのな、事務室に教材が届いたんだけど、ふたりで運ぶの手伝ってくれないか?」
「それってどれくらいですか?」
「一学年分。」
「それなら...」
要をちょっと考えると雪野の方を向いた。
「おれと先生のふたりでなんとかなるから、前田ちゃん、先帰りな。」
「え、でも...」
「あ、そういえば、前田、お前保健室で休んでた、って聞いたけど大丈夫なのか?」
いかにも今思い出したという様子の杉本...(だめだめ)。
「ね、先生もそんな子こき使っちゃだめでしょ。じゃあ、前田ちゃん、またね。」
要はそう言うと杉本を引っぱって事務室へ向かった。
「...まぁいいか...」
ひとり取り残された雪野は13Rの教室へと向かった。

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しつこく連呼していた"例のシーン"、今回入るはずだったのですが長くなりすぎたもんでふたつに分けちゃいました^^;
後編(!?)は次回UPしますのでしばしお待ち下さいm(__)m
[綾部海 2003.12.5]

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Photo by Earth Square