Triangle:Chapter2

12

要の風邪は週末の間に全快し、月曜日からまた普通に登校し始めた。
また、天もぎりぎりながらなんとか再試験に合格した。
(「ほんとにぎりぎりだからね!!」 英語科担当・谷口先生談)
そして、また"いつもの生活"が始まった、と雪野は思っていたのだが...。

天の様子がおかしい。
雪野はそう思っていた。
一見、いつもと変わらないのだが、雪野が話しかけたり、雪野とふたりっきりになったりすると態度が急にぶっきらぼうになり、顔はそっぽを向いてしまう。
そんな様子の天に雪野は「この前のこと、まだ怒ってるのかなぁ...」と思いつつも何も出来ずにいた。
そして、要もそんなふたりに気づいていたがあえて知らん顔をしたまま日々は過ぎていった。

そんなある日。
例によって委員会の会議を終えた要と雪野が13HRの教室に戻ると、天が待ち構えていた。
「要、ヨーカドー行こ!! ヨーカドー!!」
「はいはい。」
雪野は相変わらずのふたりの様子に思わず笑みを浮かべながら帰りの支度をしていた。
「雪野ちゃん。」
「あ、なに?」
「よかったら、いっしょにイトーヨーカドー行かない?」
要の言葉に雪野は一瞬かたまってしまった。
そして、要の隣でやはりかたまった表情の天をちらっと見た。
「いいの?」
「うん、この間のお礼にお茶でもごちそうするよ。な、天?」
「あ、あぁ...」
要にふられた天はぼそっとそう答えるとそっぽを向いた。
雪野はこっそりとため息をついた。

そして、イトーヨーカドーに到着した3人はまず3階のおもちゃコーナーへ。
要と天がPS2のデモ機の格闘ゲームをやっているのを横で見ていた雪野はふとすぐそばのゲームソフトの棚に目をやった。
(あ、これ...)
雪野はとあるゲームソフトを手にとった。
それは最近人気の音楽系ゲームで、CMを見るたび雪野は気になっていたものであった。
しかし、雪野はPS2の本体自体を持っていないのであきらめていたのだが...。
ゲームソフトのパッケージを見ている雪野を横目で見ていた要は手っ取り早く(!!)対戦を終わらせた(天、激怒!!)。
「雪野ちゃん、そのゲーム、うちにあるからやりに来ない?」
要はにっこり笑った。

そして、1時間後。
宮島家のマンションで、雪野と天はテレビの前に並んで太鼓型のコントローラーを連打していた(笑)
すっかりゲームに熱中していたふたりは以前と変わらぬ様子ではしゃぎあっていた。
そんなふたりを要はほほえみながら見守っていた。
「やった!! 点数勝った〜!!」
うれしそうにガッツポーズをする雪野の隣で天はがっくりと肩を落とした。
「もう一回!!」
顔を上げた天は新しい曲を選び始めた。
「あ、飲み物終わっちゃったなぁ。」
テレビの前に置かれた雪野のグラスに要はペットボトルの最後の一適を振り落とした。
「コンビニで買ってくる。」
要は財布を手に立ち上がった。
「あ、わたしが...」
「いえいえ、雪野ちゃんはお客様だから。ゲームやってて。」
要はそう言ってほほえむとリビングから出て行った。
「雪野、始まるぞ!!」
「あ、うん。」
そして、雪野と天はまた"ばち"で太鼓を叩き始めたのだが...。
ふと、ふたりは気づいてしまった。

今、自分たちがこの家にふたりっきりだということに。

そのことを意識してしまったふたりは画面の表示に反応しているどころではなく、結果は散々なものだった。
テレビ画面が変わってもふたりは黙ったままだった。
ゲームのBGMだけが部屋の中に鳴り響いていた。

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ラスト近いので"小出し"で...(前回の半分の長さだなんてとても言えない^^;)
ちなみに、綾部は"例のゲーム"、ゲーセンでしかやったことないもんで、PS2版と実は違っていたらすみませんm(_ _)m
そして、中途半端なところで次回につづく... ̄m ̄ ふふ
[綾部海 2004.5.29]

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Photo by おしゃれ探偵