※このお話は「Triangle」シリーズのパロディです。
Andante 3rd Anniversary
A Story like Little Red Riding Hood
〜赤ずきんっぽいお話〜



むかしむかし、大きな森の近くに"雪野"という名の美しい女の子が住んでおりました。
彼女は大好きなお母さんが作ってくれた"雪のように真っ白なずきん"が大のお気に入りでいつもかぶっていました。
そこで、みんなはその女の子のことを"雪ずきん"を呼びました(あれ?)。


ある日、お母さん(名前は知佐子)はこう言いました。
「雪ずきんちゃん、森に住んでいるおばあさんが具合が悪くて寝込んでいるから、この焼きたてのケーキを持ってお見舞いに行ってくれないかしら?」
「はい、お母さん。」
「途中で知らない人に会っても口をきいてはだめよ。」
「は〜い!」

「♪フンフフフフフフ〜」
雪ずきんはケーキの入ったカゴを下げて鼻歌を歌いながら森の中の道を歩いておりました。
すると…
「…なんだ? このうまそうなにおいは?」
ハラペコオオカミの天が雪ずきんに目を留めると声をかけました。
「…ど、どこへ行くんだい…か、か、かわいい…お嬢、ちゃん…(棒読み)」
「(天くん、セリフかんでるよ…。←小声)」
「うっせぇ!! ど、どこに行くかきいてんだよっ!!」
突然現れた"オオカミ・天"(顔真っ赤)にびっくりした雪ずきんは先ほどのお母さんの言いつけをすっかり忘れてしまいました。
「病気で寝込んでいるおばあさんのおうちにケーキを届けに行くのよ。」
そう言って雪ずきんが見せたカゴの中にはとてもおいしそうなケーキが…。
「!!」
その香しいにおいにオオカミ・天は思わずよだれをたらしてしまいました。
「…オオカミさん…?」
怪訝な顔の雪ずきんに声をかけられたオオカミ・天ははっと我に返り、あわててよだれをふきました。
「な、なんでもないっ!! オ、オレ、ちょっと、用事を思い出したんでそれじゃあ!!」
雪ずきんが声をかける間もなく、オオカミ・天は走り去りました。
「変なオオカミさん…」
雪ずきんはちょっと首をかしげましたが、すぐにまた鼻歌を歌いながら森の道にそって歩き始めました。

一方、その頃、オオカミ・天は森の木々の間を駆け抜けながら、おばあさんの家に一直線に向かっておりました。
雪ずきんの持っていたケーキが食べたくてたまらなかったオオカミ・天は、おばあさんと入れ替わればあのケーキを自分のものにできると気がついたのです。
「オレってほんとに頭いい〜!!」(!?)
そして、雪ずきんよりも早くおばあさんの家にたどりついたオオカミ・天はそのドアをノックしました。
「誰だい?」
「雪ずきんよ、おばあさん。お見舞いにケーキを持ってきたの。」
中から聞こえてきたおばあさんの声に、オオカミ・天は雪ずきんのマネをして答えました(はっきり言って"大根役者レベル"/爆)。
「それはうれしいねぇ。さぁ、ドアを開けて入って来なさい。」
おばあさんがすっかりだまされていることに心の中で大笑いしながら、オオカミ・天はドアを勢いよく開けました、が…。
「げっ!!」
「おやおや…これは森をうろちょろしている"チビオオカミくん"じゃないかい。」
部屋の奥のベッドに横になっていたのは久志おばあさん(!?)でした。
「な、なんで、おまえが"ばあさん"なんだよ!?」
「まあまあ、そんな"細かいこと"は置いといて…」
いつのまにかオオカミ・天の目の前に立っていた久志おばあさんは天の両肩にがしっと手をやりました。
「そのオオカミくんがこの家に何の御用かな…?」
口調はおだやかなのですが、その有無を言わせぬ表情(!?)と力のこもった手にオオカミ・天はびびりまくっておりました。
「いや…あの、オレは、雪ずきんの…」
"雪ずきん"という言葉を聞いた途端、久志おばあさんの目がきらりと光りました。
「まさか…うちのかわいい!!雪ずきんちゃんに何か不埒(ふらち)なことを…」
「な、なんだよ!? "不埒"って!?」
久志おばあさんの言葉にオオカミ・天が真っ赤な顔であたふたしていたその時…。
「♪フンフフフフフフ〜」
外から雪ずきんの鼻歌がかすかに聞こえてきました。
「やべっ!! あいつ、もう来ちまったっ!!」
実は、オオカミ・天は"おばあさんと入れ替わる"と言いながらも"それ"をどうやってやるのかまったく考えておりませんでした。
一応、台本(!?)には『オオカミはおばあさんを丸呑みしてしまいました』とあるのですが…
「そんなことできるわけないだろ〜、こいつ相手に!!!」
パニック状態になったオオカミ・天はひとり部屋の中を右往左往しておりました。
すると、突然、久志おばあさんがいままでかぶっていた"ナイトキャップ(フリフリつき!!)"をオオカミ・天の頭の上にぽんと置きました。
「わかりました。私はそこのタンスの中に隠れるから、あなたはしっかりと私の"代役"を務めなさい。」
「へ?」
オオカミ・天が突然の展開に着いていけずあっけに取られている間に、久志おばあさんは部屋の隅のタンスのドアを開けて入ろうとしました。
「あ、もし、雪ずきんちゃんに"おかしなこと"をしようとしたら…ただじゃおかないからね…」
久志おばあさんはそう言い捨てる(!!)とタンスのドアをパタンと閉めました。
オオカミ・天は冷や汗をだらだらとながしながらそのドアをじっと見つめていましたが…
「おばあさ〜ん、雪ずきんです〜♪」
雪ずきんが玄関のドアをノックしたので、あわててベッドにもぐり込みました。

「は、入っておいで、雪ずきん…」
今度は久志おばあさんのマネをしたオオカミ・天の言葉にしたがい、雪ずきんは家の中に入りました。
そして、ベッドのそばに来た雪ずきんは驚いてしまいました。
「まぁ、おばあさん、なんて…」
雪ずきんは思わずそこで言葉を切ってしまいました。
本当は、台本(!?)通り『なんて大きな手!!』と言おうと思ったのですが…どう見ても"この手"は"本当の久志おばあさんの手"よりも小さいのです…!!
(で、でも、ここはやっぱりちゃんと言わないと先に進めないし…)
そう思った雪ずきんは深々と息をはきました。
「お、おばあさん、なんて大きな手!!」
「お、おまえをしっかりと抱きしめられるようにだよ!!」
掛け布団を頭からかぶっていたオオカミ・天は"カンペ"を見ながらそう答えました(でも、"久志おばあさんのマネ"はすっかり忘れて/爆)。
「それに、おばあさん、なんて大きな目!!」
("目"!?)
そう言った瞬間、雪ずきんは"おばあさん"の顔が掛け布団ですっかり隠れてしまっているのに気づき、あせってしまいました。
しかし、同じようにそのことに気がついたオオカミ・天はしっかりかぶったナイトキャップと目のところまでを布団からあわてて出したので、雪ずきんは思わず胸をなでおろしました。
「お、お、お、おまえを、しっかりと、見られるようにだよ!!」
顔を出した瞬間に雪ずきんと目が合ってしまったオオカミ・天はどぎまぎしながら、しどろもどろにそう言いました。
「そして…おばあさん、なんて大きな口なの!!」
「それは、おまえを…」
そう言ってオオカミ・天がベッドから飛び出そうとしたその時…。

「ちょっと待った!!」

部屋の中と外から同時に声が掛かりました。
ひとりはタンスから飛び出してきた久志おばあさん、そして、もうひとりはたまたまベッドの横の窓の前を通りかかった狩人・要でした。

突然のふたりの登場にオオカミ・天も雪ずきんもあっけにとられてしまいました。
「あれ?…久志くん、じゃなくて、おばあさん、なんで、タンスから…? それに、要くんもまだ出番じゃあ…」
雪ずきんがひとりそんなことをつぶやいている一方、オオカミ・天はいつのまにか久志おばあさんと(いつのまにか家に入って来ていた)狩人・要にがっちり両脇をかためられていました。
「いや〜、雪ずきんちゃんを"食べよう"とするなんて、ほんとに悪いオオカミくんだねぇ…」
「そうですねぇ、雪ずきんちゃんを"食べよう"とするなんて…」
「ちょ…!! おまえら!! "食べる"のとこだけ変に強調するんじゃねぇ!!」
久志おばあさんと狩人・要の言葉にオオカミ・天は真っ赤な顔でツッコミました。
しかし、ふたりはオオカミ・天をすっかり無視して話を続けました。
「やっぱり、"悪いオオカミ"には必要だと思うんだよねぇ、"アレ"が…」
「あぁ、"アレ"ですか…」
淡々と話すふたりの横でオオカミ・天はなぜか"いやな予感"がし始めました。
「あのさぁ…"アレ"って、なんだ…?」
おそるおそる尋ねるオオカミ・天に久志おばあさんと狩人・要はにっこりと笑いました。
「"アレ"と言えばもちろん…」
「"おしおき"に決まってるだろう♪」
そう言うと、狩人・要はオオカミ・天をひょいと肩に担ぎ上げました。
「え!? え!?」
状況が飲み込めていないオオカミ・天は狩人・要の肩の上で目を白黒させておりました。
「それじゃあ、後はこちらにおまかせ下さい。」
「は〜い、よろしく〜♪」
そう言って、狩人・要はオオカミ・天を連れておばあさんの家を後にし、久志おばあさんは笑顔で見送りました。
そして、雪ずきんはそんな三人(!?)を言葉もなく見つめておりました。

「あ〜、ひと騒ぎしたらおなかすいちゃったなぁ。雪ずきんちゃんが持ってきてくれたケーキでお茶しようか♪」
そこでやっと雪ずきんは我に返りました。
「ちょ、ちょっと待って!!  要くんたちはいったいどこに…!? あ、それに、おばあさん、具合が悪かったんじゃないの!?」
「だって〜そうでも言わないと、雪ずきんちゃん、遊びに来てくれないんだもん♪」
無邪気な笑顔の久志おばあさんに雪ずきんはがっくりと肩を落としました。
「さぁ、おばあさんはお湯を沸かすから、雪ずきんちゃんはケーキの準備をしてちょうだい。」
「あ、は〜い。」
実は、"お母さんのケーキ"を楽しみにしていた雪ずきんはすぐに気を取り直して、食器棚に向かいました。
「あ、オオカミさんと狩人さんもケーキ、食べてけばよかったのに…」(←オオカミ・天、大ショック!!)


こうして、雪ずきんは優しい知佐子お母さんと"祖母バカ"(!?)な久志おばあさんと幸せに暮らしました。
そして、狩人・要とオオカミ・天がその後どうなったのか…それはみなさんのご想像におまかせします(爆)

え〜「おととしと"オチ"がいっしょじゃねぇか!!」と天にツッコまれてしまいそうなお話ですみませんm(_ _)m(笑)
めちゃくちゃひさしぶりな綾部の新作、楽しんでいただけたら幸いです。
これからも"いつか必ず大復活!!"をモットーに(!?)頑張りたいと思っております。
三年間ほんとにありがとうございます!! そして、これからもよろしくお願いしますm(_ _)m
[綾部海 2006.10.11]


このお話は"Andante三周年記念話"として10/11〜11/12の間、TOPで公開されていたものです。
ほんとはBDキャラも登場させたかったのですがどうも話がごちゃごちゃになっちゃいそうだったので、すっきりと(!?)Triのメンバーのみでお送りしました(笑)
[綾部海 2006.11.20]

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Photo by So-ra