004.マルボロ
Smoke Gets in Your Eyes
3


「わたしは先輩たちの関係、間違ってると思います!!」

そう言い捨てると沙也は屋上の出口へと走っていった。
「おっと!」
沙也はちょうど屋上に入ってきた男子生徒とぶつかったがそのまま行ってしまった。
「なんだ〜?」
沙也の消えた方向を見ながら頭をかいていたのは保だった。
「お、晃平、いたいた。」
保は俺の姿を見つけると片手をあげながら近づいてきた。
「保、なんか用か?」
俺は座ったまんまぬぼーっと高い保を見上げていた。
「田中先生が探してたぞ。進路のことで用があるって。んで、たぶんここにいるんじゃないかなぁ、と。」
つきあいが長いだけあって俺の行動は保にはお見通しらしい。
俺は保が差し出す手を取って勢いよく立ち上がった。
「そういえば、さっきの子、晃平の知り合い?」
「ん、ちょっとな。」
どうやら沙也がなにか怒鳴っていたのが聞こえていたらしい。
屋上には俺しか残っていなかったから、俺と話していたのがわかったのだろう。
「どっかで見たことある気がするんだけどなぁ...」
保は首をかしげて思い出そうとしてるようだった。
「2年のバレー部の子だってさ。」
「バレー部?」
保も敦美のことを知っているので(実際、保の方が敦美とのつきあいは長いのだ)そこんとこにひっかかったようだが、どうやらそっち関係でではないらしい。
「とっとと行こうぜ。昼休み終わっちまう。」
俺は立ち止まって考え込んだままの保をほっといて階段を降り始めた。
保はあわててついてきた。
「田中先生どこにいるって?」
「数学準備室。...あ!!」
突然手をぽんとたたきながら大声をあげる保に俺はびっくりした。
「何!?」
「思い出した!! あの子、社会科準備室によくいた子だ!!」
「社会科準備室?」
「うん。去年、杉本先生のところに御用聞きに行ったときによく見かけたんだ。」
保は胸につかえていたものがすっきりしたという顔になった。
「よくそんなの覚えているな?」
「俺はお前とちがって真面目な教科係だったからな。」
今日クラスのみんなの前で杉本先生に言われたことをまたくりかえされて俺はぐさりときた。
たしかにまともに御用聞きに行ったこともないからな、俺は...。
それにしても...そうか、そうだったのか。

おそらく沙也は杉本先生が好きなのだ。
で、自分は先生とうまくいかないのに、ある意味同じ境遇の俺らが仲良くやってるのが気に食わないのだろう。
でも、なんで俺が文句言われなきゃならないんだ...。

「こうちゃん。」
「え?」
「早くご飯食べないと遅刻するよ。」
いつのまにか考え込んでいた俺はまゆから茶碗を受け取ると朝飯をぽそぽそと食べ始めた。
俺の目線はテーブルの上に向いていたが、向かいに座ったまゆの視線を感じていた。
「こうちゃん。」
「ん?」
「今日...何時くらいに帰ってくる?」
俺は思わず箸が止まった。
「...わからない...」
俺は絞り出すようにそうつぶやくと、残りのご飯をかっこんだ。
「行って来る。」
俺は学生鞄を手にするとリビングを後にした。

ほんとは昨夜からまゆが俺に何か話したがっていることに気づいていた。
多分その内容は俺が考えているものと同じで、なぜか俺はそれを聞くことから逃げていた。
だから、昨夜もまゆから逃げるよう先に寝てしまったのだが...。

放課後、俺は自分の行動が矛盾していることはわかりながらも社会科準備室へ向かった。
「お、酒井、どうした?」
杉本先生は窓際でタバコを手にしていた。
「先生に聞きたいことがあるんだけど...プライベートなことでもいい?」
「内容によるな。」
そう言いながら先生はそばにおいてあった灰皿にタバコをぎゅっと押しつけた。
俺は準備室のドアを閉めると少し杉本先生に近づいた。
「で、なんだ?」
先生は窓にもたれながら俺の方を見た。

「先生ってまゆとどんな関係?」

それを聞いた杉本先生はくすっと笑った。
「何?」
「いや...おとといも同じ質問をされたもんでな...」
俺はふいにあのポニーテールの二年生が頭に浮かんだ。
「筒見沙也?」
「よくわかったな...知り合いだったのか?」
杉本先生は驚いた顔をした。
「ううん...昨日、話しかけられたから...」
先生は苦笑いをした。沙也が何を話したのか言われなくてもわかっているのだろうか。
「それで、先生、答えは?」
「まゆ...橘から聞いてないのか?」
「何も。」
俺が首を振りながら答えると、先生はなんだか難しい顔をした。
「それじゃあ...俺の口からは何も言えない。知りたいなら橘に聞け。」
「なんで...!?」
「お前が知りたいのは"俺にとってあいつがどういう存在か"じゃなくて"あいつにとって俺がどういう存在か"だろ? 俺にはお前の欲しい答えはやれないからだ。」
「でも...」
その時、社会科準備室のドアががらっと開いた。
「晃平!! こんな所で何やってるんだよ!?」
「保!?」
準備室の入口に息を切らした保が立っていた。
「まゆ先生、正門のとこで待ってるぞ!!」
「え!?」
俺は一瞬保の言葉に耳を疑ったが、気がつけば身体は勝手に社会科準備室を飛び出していた。

♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪

あと一回で終わる...だろうか!?(ーー;)
(まだ全然書いてないもんで^^;)
風邪がしっかり治ったら書きますので気長にお待ち下さいm(_ _)mm(_ _)m
[綾部海 2004.2.6]

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