Triangle:Chapter2

5

「あれ?」
要が目を開けると雪野の姿があった。
「なんで雪野ちゃんがいるの?」
「って、さっき玄関で会ったでしょ!!」
「...そうだっけ?」
ベッドに横になったまま軽く首を傾げる要の額に雪野は濡れタオルを乗せた。
「...これは相当重症かもね...」
雪野がため息をついていると、リビングで探し物をしていた天と久志が戻って来た。
「雪野、体温計あったぞ!!」
「あ、兄(あに)くん、目、覚めたんだ。」
「だから、"兄"じゃないって!!」
天と久志の"掛け合い漫才"のようなやりとりに「いつのまに仲良くなったんだろう?」と思いながら、雪野は濡れタオルを外した。
「じゃあ、要くん、これで熱計って。」
要は天から雪野経由で渡された体温計を受け取るとわきの下にはさんだ。
「そういえば...おれ、いつ玄関から部屋に戻ったんだっけ?」
みんなの顔を見て思い出したらしい要は横になったままぼそっとつぶやいた。
「あ、君ね、玄関で倒れちゃったから俺がここまで運んだんだよ。」
久志はそう言いながら要の顔をのぞきこみにこっと笑った。
「それはご迷惑を...」
「いえいえ。」
「い〜から、久志くんは黙ってて!!」
要となごやかに談笑していた久志は雪野の一喝に傷ついた顔をしながら部屋の隅に退散した。
「あと、風邪薬あった?」
「ああ、これ。」
雪野は天から風邪薬の箱を受け取るとしばし考え込んだ。
「やっぱこれってなんか食べてからじゃないとまずいよね?」
「あ、そうなの?」
天の返答に雪野はがっくりと肩を落とした。
どう見ても天ひとりで要の看病は無理だろう...
そう思った雪野は自分が学校を休んで看病をしようと思ったが...今日の放課後には文化会の会議があるし...それに考えてみたら天も再試があるではないか...
雪野が頭を抱えてうんうん悩んでいると、体温計のブザー(といっても"ピー")が鳴った。
「何度?」
「38.6℃。」
「病院行った方がいいんじゃないの?」
雪野は横から口を出した久志をぎろっとにらみつけ("黙ってろって言ったのに!!")、さらに頭を抱えてしまった。
(う〜ん、どうしよう...)

「よかったら俺が看病しようか?」

「え!?」
突然の久志の言葉に3人は異口同音に驚きの声を上げた。
「そんないいですよ!! たぶん寝てれば治りますし。」
「でも、今のまんまじゃ薬も飲めないでしょ。」
久志の言葉に一堂"うっ"となった。
「オレがいるから大丈夫だって!! 学校なんか休めばいいし。」
「って、天、お前、今日再試だろ!?」
「そんなのいいって!!」
「よくない!!」
「ストップ!!ストップ!!」
言い争いを始める要と天を雪野はあわてて仲裁した。
興奮したせいか要は顔が真っ赤になり息も荒くなっていた。
「天くん、要くんを悪化させてどうするの...」
雪野の言葉に天はしゅんとなった。
「ね、"弟くん"は再試で、雪ちゃんもたしか今日は会議があるんでしょ? やっぱ俺が適任なんじゃないかな?」
久志は雪野ににっこりと笑いかけた。
確かに要を今のまま放っておく訳にいかないし...。
「...要くんが構わないなら...」
雪野はおずおずと要の方を見た。
そんな雪野に要はくすっと笑った。
「それじゃあ、お願いします。」

そして、すでに遅刻ギリギリだった雪野と天は久志の車で学校まで送ってもらった。
(途中、杉本先生の携帯に"遅刻するかもしれない"ことと要の欠席を連絡しておいたが)
「帰り、迎えに来ようか?」
「電車で帰るからいいよ。要くんについててあげて。」
「了解。」
久志は校門前のふたりに軽く手を振ると、元来た道を戻っていった。
「雪野...」
それまでずっと黙っていた天がやっと口を開いた。
「要...大丈夫かなぁ...」
今にも泣き出しそうななさけない顔の天に雪野は"やれやれ"とため息をついた。
その時、始業のチャイムが鳴った。

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気がつけば出だしが前回と同じ...(まあ"ねらった"ことにしておこう←おいおい)
それにしても、綾部のキャラってかならず1回は"風邪ひきシーン"が出てきますね^^;(←綾部が風邪ひきやすいから)
そして、次回も久志パパ大活躍!?(雪野の"久志イジメ"も忘れずに(笑))
[綾部海 2004.3.27]

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Photo by おしゃれ探偵