Triangle:Chapter2

6

「お腹すいた...」
雪野は4時間目の授業が終わると机の上の教科書を中にしまいながら深々とため息をついた。
考えてみたら、朝食前に天に呼び出されたので結局何も食べていないのだ。まぁ、それは天も同じだと思うが...。
そんなことを考えながら今日はお弁当を持って来ていないことを思い出した雪野は財布を片手に席を立った。
「あ、雪野!!」
ちょうど教室を出たところで雪野は天と遭遇した。どうやら雪野に会いに来たらしい。
「オレ、腹減って死にそ〜!!」
またもや今にも泣き出しそうな顔の天に雪野、脱力。
「わたしも今日は持って来てないから学食に行かないと...」
その時。

『生徒のお呼び出しをいたします。13HRの前田雪野さん、至急事務室までおいで下さい。』

雪野と天は廊下のスピーカーを見上げるとふたりして首を傾げた。
「"事務室"?」

「あ、来た来た。」
雪野と天が北校舎1階の事務室へ向かうと、事務室に隣接した"正面玄関"に久志の姿があった。
「なにしに来たの?」
冷たく言い放つ雪野に久志は傷ついた顔。
「そんな言い方しなくたって〜!! あ、"弟くん"もいるんだ。ちょうどよかった。」
「だから"弟"じゃねぇって!!」
久志は天の反応に楽しそうな顔をしながら雪野に紙袋を差し出した。
「お弁当。ちゃんとふたり分あるからね♪」
にこっと笑う久志に雪野は思いもかけない様子だった。
「あ、ありがとう。」
「どーいたしまして。」
雪野はなんだか照れくさそうに紙袋を受け取った。
「なぁ、要は?」
天の言葉に雪野ははっとなった。
(そうだ!! まず要くんのこと聞かなきゃいけなかった...!!)
「おかゆ食べて薬飲んだらぐっすりねむちゃった。たぶん、病院行かなくても大丈夫じゃないかな。」
久志の言葉に雪野と天はほっと息をついた。
「じゃあ、俺そろそろ戻るわ。雪ちゃんも帰り、寄るんでしょ?」
「あ、うん。」
「それじゃあ、勉強がんばってね。」
久志は事務室との連絡用の小さな小窓から「ありがとうございました〜!!」とあいさつすると、ひらひらと手を振りながら正面玄関を後にした。

「失礼しました〜。あれ、天?」
雪野と天が久志を見送ったまま立ち尽くしていると、事務室から生徒会長の西森航(2年)と元・生徒会長の三宅(3年)が出てきた。
「あ、西森会長、三宅会長、こんにちは!!」
雪野は紙袋を胸に抱えたままぺこっと大きく頭を下げた。
「いや、前田さん、"先輩"でいいよ。まだ"会長"って呼ばれるの慣れないもんで...」
"新米"生徒会長は照れくさそうに頭をかいた。
「そうか?俺はいつでも大歓迎だけど。」
と、"元"・生徒会長はけろっと言った。
「どうも、前田さん。来期こそはぜひ生徒会に♪」
「はぁ...」
にっこり笑う三宅に雪野は困った顔で笑った。
(結局、要も雪野も生徒会役員に立候補しませんでした。←詳しくは「Selfish」をご覧下さい)
そして、三宅はむすっとした顔でそっぽを向いている天に近寄ると...
「天!! お前、先輩にあいさつくらいしたらどうだ!?」
思いっきり天をはがいじめにした。
「うるせ〜!! 誰が"先輩"だよ!!」
「なに〜!!」
三宅は左腕で天をはがいじめにしたまま、げんこつにした右手で天の頭をぐりぐりした。
「いて!!いて!! ガキの頃から会うたびにオレのこといじめるヤツ、"先輩"なんて認めねえぞ!! 三宅のバカ!!」
「なんだと!! "バカ"って言ったヤツがバカ!!」
「三宅さん、そのへんで...」
じゃれあうふたりに(天は本気でいやがっているが)、航は苦笑い、雪野は呆然としていた。
「三宅会長ってこういう人だったんだ...」
生徒会の会議などで見せる"名会長"っぷりとのあまりのギャップに雪野は驚いていた。
「あの人、天をからかうのが楽しくてたまらないもんで...」
三宅慎一、"天からかい歴約10年"の男(笑)(当然、小・中学校も天といっしょ)

「あれ、そういえば要は?」
航の言葉に三宅も動きを止めたが天は抱きしめたままだった。
「そう言われれば、"3人組"のひとりがいないんで変だと思ってたんだ。」
「うそつけ。」
三宅の言葉に天がぼそっとつっこむと、三宅の"ぐりぐり攻撃"がまた再開した(汗)。
「要くんは今日は風邪でおやすみなんです。」
「え、そうなんだ!! 要が休むなんて珍しいなぁ。」
「わ、航!!」
突然会話が中断されて雪野はびっくりした顔で天を見た。
「ん?」
「昼飯食ったか?」
「まだこれから。」
「じゃあ、いっしょに食おうぜ。」
「うん、いいよ。」
にっこり笑う航に天はほっとした顔をした。
「え〜、天、俺は?」
「ぜってぇ三宅なんかといっしょに飯食わねぇ!! いいかげん離せよ!!」
三宅は残念そうに天を解放すると、ひとり教室へ戻っていった。
「俺、生徒会室に荷物置きっぱなしだから寄ってもいいかな?」
「はい、もちろん!!」
「このメンバーにぴったりの場所があるからそこで食べよ♪」
いたずらっぽく笑う航に雪野と天は「?」と首を傾げた。

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題して「お弁当編・前編」。
ほんとは1回で終わるはずだったのですが...三宅が思ったよりがんばってくれたもんで^^;
(1回だけのキャラのつもりだったのに)
というわけで、次回は「お弁当編・後編」です♪(要の出番がないかも...)
[綾部海 2004.3.31]

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Photo by おしゃれ探偵